2012年09月28日
安曇野市で、『設計室a-ray』(これでアライと読みます)
という名の設計事務所を構えている新井と申します。
今回は思うところがあり、
少し長めの文章になっています。
お暇な方はお付き合いください。
以前勤めていた設計事務所でのある出来事。
その事務所が行ったオープンハウスに来られたお客様(Aさんご夫婦)が、
ぜひ家を建ててほしいということで来社しました。
新居に対する夢や希望をたくさんお話ししていただき、
信頼関係を築きあげながら打合せをする日々が続きました。
毎週のように。
プランも二転三転しました。
急に要望が180度変わったり、
3つ前の案に戻してほしいと言われたり。
勿論そういうことはよくある事なので、
理想のカタチを求めプランニングを進めていきました。
その設計事務所は設計から施工まで一貫して行う方式をとっていたので、
設計が完了したら次は見積作業になります。
何ヶ月もかけて決まった夢の家。
見積もワタクシが担当したので、
一円単位で細かく拾いました。
そして見積の提示。
Aさんご夫婦から
「少しオーバーしているので、もうすこし削ってほしい」との要望がありました。
皆さん予算に限りがあるのは当たり前ことであって、
勿論払えないものは払えないのも当たり前。
減額案を提示しながら、
予算内になるよう細かい作業が続きました。
数日後Aさんから一通のメールが届きました。
内容はこんな感じ。
「実は御社と平行してもう一社と打合せを重ねておりました。
そちらの会社の見積の方が若干安いので、
今回は縁が無かったということで。
今までありがとうございました。」
勿論契約するまでは無料ということになっていたのですが、
数ヶ月進めてきたプロジェクトがこのようなメールで終わったことに、
とても寂しい気持ちになりました。
そしてもう一社と競合していたという初めて知った事実に、
さらにショックを受けてしまいました。
『提案力で負けたのかな』
『もう少し予算が削れるところがあったのかな』
自問自答する日々が続きました。
そんなことを忘れかけていた数ヵ月後。
Aさんの建設予定地の近くをたまたま車で通っていた時、
ふと、
『どんな家を建てたのかな?』という好奇心で、
現地を見に行ってみました。
皆さんの予想通り、
そこに建っていたのは、
ワタクシが設計した建物と姿形がまったく同じものでした。
血の気が引く思いとはまさにこのこと。
『見なきゃよかった・・・』
その時湧き上がった感情がそれでした。
設計図書に著作権があるのは知っています。
ただそれ以前に、
数ヶ月ですがお互いの本音をぶつけ合い辿り着いた理想形を、
Aさんと他社にうまく利用されたという悔しさを、
どう処理すればいいのか悩みました。
まあ時間が解決してくれましたけど。
とここまで書いて次のお話。
以前ブログにもこれからの物件ということで載せたSA邸。
去年の10月からそのプロジェクトは始動していました。
工事内容は、
老朽化した母屋の耐震補強と増築。
当初は某大手メーカーに声を掛けていたようですが、
納得がいかないということで親交のあった大工さんに依頼。
その大工さんがワタクシに声を掛けてくれて、
プロジェクトがスタートしました。
間取りを書くのが好きな奥様で、
よくそのノートを見せていただきました。
夢を現実にするその作業はさぞや楽しい時間だったと思います。
(若干暴走気味でしたが・・・)
話し合いは続きました。
予算や土地の制約や法律関係が結構厳しかったので、
数パターンの方向性の違う提案をし、
打合せしながら選択していくという形にしました。
打合せする度にまったく違う要望が出てくることが少し気にはなっていましたが、
今年の春の段階で、
「新井さんにお願いしようと思います」という嬉しい言葉を頂いていたので、
ワタクシも気合を入れていました。
「少し夫婦で検討したい」ということだったので、
連絡を待つ形で待機となりました。
それからたまに連絡をこちらからしましたが、
忙しくてまだ話し合いが進んでいないという返事が続きました。
心の奥が少しざわざわする感覚。
そして二ヶ月ほど前。
改めて電話するとびっくりする言葉が。
「実は今もう一社と打合せを進めていて、
プランニングをさせている」
予感は的中。
さらに、
「そこにお願いしようか迷っているけどどうすればいいですかね~」と、
ワタクシに質問を投げ掛けます・・・。
『んっ?なんか話が変な方向にいっているぞ』
頭の中でこの事態を整理する事に一生懸命なワタクシ。
「新井さんとももう一度お話をしたいので、
時間作ってもらえますか?」というので、
後日伺うことに。
そして当日。
訪問すると、
今までの経緯を話してくれました。
「他の会社がどんな提案をするのか知りたくて声を掛けた」
「プランするのは無料ということだったので、書かせてみた」
そして最終的に出てきた言葉は、
「その会社のプランで新井さんが建てたら安く出来ます?」
気の長いワタクシですが、
このときばかりは怒りを通り越して呆れてしまいました。
それでも一応プロとして、
『他社のプランの見積は基本的にしません』ということを伝え、
予算に収まるような新たな提案をしました。
また改めてどこで建てるか検討するということになったので、
その場は終わりました。
そして数日前。
あることを調べるためにサイト巡りをしていると、
出てきたホームページの中にSAさんがプランニングをさせていた会社がありました。
どんな建物を造っているんだろうと見ているうちに、
見たことのある家の写真に目が留まりました。
皆さんお察しの通りSAさんの家でした。
内容は、
無事に契約が済んだこと、
この日が来たのが幸せというSAさんのコメント、
今までの経緯等が綴られていました。
そのブログの日時は8月下旬。
一ヶ月前に決まっていたんですね~。
紹介してくれた大工さんには、
契約できず力になれなかったので、
報告とともに謝りの電話をしました。
(事の経緯にかなりびっくりしていましたが)
この二つの出来事は、
誰が良くて誰が悪いということではありません。
ワタクシも反省するところはたくさんあります。
提案力。
営業力。
人間力。
ただあえて言わせていただきます。
『筋を通せ!』と。
もしかしたら違う意味にとられるかもしれないので補足を。
「依頼したのなら契約もしなくちゃ!」ということではなく、
どんな理由であれ断る場合でも、
メールや事後報告(まだ無いですが・・・)ではなく、
自分の言葉で直接話してほしいなと。
ワタクシも笑顔で、
『いい家造りをしてくださいね』と言いたいのです。
せっかくのご縁だったのですから。
お互いを尊敬し、
発注側と受注側という枠を超えるような関係性を築いていきたいと思っています。
長い文になってしまいました。
愚痴?
いえいえ違います。
ただ無性に書きたくなってしまったので。
お付き合いありがとうございました。
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